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心の謎をゲノムで解き明かす [好きな本]

病院スタッフの中でも、以外に血液型占いが好きな人が多いです.

血液型占いにそれほど科学的根拠があるわけでないと思いますが
それでも血液型の話になると、ちょっと盛り上がったりします.

職場に新しくやってきたスタッフも血液型の話しをきっかけに
周りと早く溶け込んだりすることができます.

職場の宴会などの席でも、あまりなじみのないスタッフとも
とりあえず天気とか血液型の話をしておけば、何となく楽しく過ごせます.

血液型は一種のコミニケーションツールとして、それなりに重宝されています.

実際のところはどうなんでしょうか.
遺伝子情報、ゲノムで性格や心がわかるのでしょうか.


「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学 (NHK出版新書)

  • 作者: 宮川 剛
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2011/02/08
  • メディア: 新書



宮川剛氏は藤田保健衛生大学総合医科学研究所教授を務めておられる方です.
有名な利根川進博士と共同研究の経験もある脳科学研究のスペシャリストです.

宮川氏は、人の心の謎に対して
遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)を用いた
行動様式の研究というアプローチで挑まれています.

この本では、自信の研究成果を中心に、遺伝子と心の関係について
紹介されています.
脳の歯状回と呼ばれる部位での神経細胞の発現に
特定の遺伝子が関連していることがわかりやすく書かれてあります.

さらに最近アメリカで拡がっている個人向けの遺伝子解析サービスについても
紹介されています.
今では、100万もの遺伝子型をわずか2万円強で調べてくれる
個人向け遺伝子解析サービスがあるそうです.

遺伝子研究が凄いスピードで進む現代において
望むと望まざるにかかわらず私たちの生活の中にこうした
遺伝子に関係したビジネスサービスが浸透してきています.

宮川氏は、こうした遺伝子解析サービスの問題点についても書かれています.
例えば保険加入や就職、結婚時において遺伝子情報が差別に繋がる可能性、
さらには遺伝子情報のセキュリティはどうなるかについてです.

遺伝子ビジネスが拡がるにつれて疑似科学的な粗悪サービスも増えることが
懸念され、それに対してどのように対応し、規制を考えていくか
わかりやすく解説されています.

ちょうど最近のNEJMにもこうした消費者向けの
ゲノムワイドプロファイリングについての論文が掲載されていました.
現時点ではゲノム解析による一般集団への影響は不明ということです.

この本では、血液型占いについても脳科学とゲノムの立場から
解説されていてぜひ一読をお勧めします.

先日の記事で紹介したクロニンジャー博士のパーソナリティ理論についても
触れられています.
ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質受容体の遺伝子による
ばらつきの影響はせいぜい3%程度を説明するにすぎないということです.

まだまだ現状では遺伝子解析でそれほど単純明快に心の問題を
解決するには至っていないです.

遺伝子や血液型に興味のある医療スタッフは多いと思いますし
とても分かりやすい本ですのでオススメです.

参考までにこちらが、この本で紹介された遺伝子解析サービスを
行っている23andMeのサイトです.

 1)Genetic Testing for Health, Disease & Ancestry; DNA Test - 23andMe
 
測定きっと.gif

199ドルで簡単に遺伝子解析が受けられるそうです.
ネットで申し込む形式なので、米アマゾンで本を買うのと同じ感覚なので
簡単でびっくりですね.

さらにこちらはゲノムプロファイリングに関するNEJMに掲載された論文です.

 2)The New England Journal of Medicine 日本版
 疾患リスクの評価を目的として消費者に直接販売される  ゲノムワイドプロファイリングの影響

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「大局観」を学ぶ [好きな本]

日々の仕事の追われて、なかなか落ち着くことがありません.

手術や治療を頑張ったにもかかわらず、想定外の合併症に遭遇したり
治療後の経過が思わしくなく、不幸な結果になることもあります.

特に御高齢の方々の治療には、悩みがつきません.
手術適応とわかっていても、手術に堪えられる体力がなかったり
ひどい腎障害や合併症のためにカテーテル治療に
躊躇しまうこともあります.

研修医の頃に「病気ではなく人を診なければならない」と
上司に指導された言葉が最近身にしみています.

「木を見て森を見ない」なんてことがないようにと思いますが
まだまだ修業が足らず、いつもバタバタしている私です.


大局観  自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21)

大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21)

  • 作者: 羽生 善治
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/02/10
  • メディア: 新書



名人・羽生善治氏が「大局観」の極意について書かれた本です.
日々の迷いを覚まさせてくるような言葉が並んでいます.

・考え抜いても結論がでなければ「好き嫌い」で決めていい
・予期し得ない出来事には「野生の勘」で立ち向かう
・自由闊達な精神が非常識を常識に変える.「今にわかる」
・とりあえず出来ることからこつこつとやる

現役最強の将棋棋士である羽生氏の考え方はとても勉強になります.

カテーテル治療の世界も、将棋の世界と同様に
すごいスピードで技術革新が進んでいます.

勉強と修業を怠れば、すぐに時代遅れになってしまうほどです.

若い頃のような体力がなくなってきた私にとって
これからも医療の世界で頑張るために、この「大局観」は
有用なのかなと感じます.

羽生氏によれば「大局観」とは
 ー勝負の手を読む力は若い時が上だが、棋士は年齢を重ねるごとに
 「大局観」を身につけ、逆に「いかに読まないか」の心境となる.
  それは年齢とともに熟し、若き日の自分とも戦える
  不思議な力を与えてくれるものである.ー
とあります.

ついつい目先のことに捕らわれがちな自分を反省して
少しでも先を見通す力が身に付けたいものです.

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「仕組み」づくりを考える [好きな本]

日本全国の病院と同じように、私たちの病院でも
慢性的なマンパワー不足に悩みつつ、日々仕事をこなしています.

予定の仕事であれば、ある程度段取りと人員配置で
業務をコントロール出来るのですが、実際にはなかなか難しいです.

病院では、緊急や病棟での急変など常に予定外の業務が入ってきます.
限りのあるマンパワーや医療リソースをなんとかやりくりして
頑張っているのが現状です.

カテ室を任されている私としては、緊急時の対応も含めて
いつも良い「仕組み」作りに頭を悩ませています.

常にぎりぎりの状態で仕事をしていると
いざという時に余力がなくなって、患者さんの治療に支障を来します.

マンパワーだけでなく病院の設備も、いざという時の余力を
残しておかなければならないと思います.

私たちのカテ室で実践しているのは、一人一人のスタッフが
自分の専門だけでなく、専門外のことも皆で一緒に勉強することです.

カテ室業務にかかわる情報やスキルを、スタッフたちが
自主勉で共有しています.

いざ緊急!という時には、とりあえず最初にカテ室に駆けつけた
スタッフがカテの準備を行っています.
予算の関係で設備の充実は、すぐにどうこうならないのですが
人的資源は、一人一人がパワーアップして助け合うことで
少しでも良い仕事をめざしています.

ライブデモンストレーションなどでいろいろな施設のカテ室を
見学する時には、オペレーターの華麗なテクニックだけでなく
カテ室のコメディカルスタッフの動きとか、カテ室全体の仕組みが
とても参考になります.

良いカテ室、良き現場は、スタッフが良く訓練されていて
モチベーションも高く、スタッフ全体の動きが
とても良く考えられているようです.

だからコメディカルスタッフも、どんどん外に出かけて
武者修行を続けて欲しいと思います.

「仕組み」作りを考える上で、この本を参考にして勉強してみました.


小飼弾の 「仕組み」進化論

小飼弾の 「仕組み」進化論

  • 作者: 小飼 弾
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2009/03/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ビジネスの話だけでなく医療問題についても触れられているのが
ちょっと新鮮な感じがしました.

参考文献に、本田宏先生の「誰が日本の医療を殺すのか」が
上げられているのが、ちょっと興味深く感じました.

良き医療のシステムを考えるために、きちんと「仕組み」を考えること
いろいろな職種のスペシャリストの方々の知恵を頂くことが
とても大切なのだと思います.

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「患者様」が医療を壊す [好きな本]

ちょっと最近マイブームでして、また岩田先生の本です.


「患者様」が医療を壊す (新潮選書)

「患者様」が医療を壊す (新潮選書)

  • 作者: 岩田 健太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/01
  • メディア: 単行本



様々な問題をかかえる医療現場での様々な対立構造を
分かりやすく解きほぐし、対立から対話に進むことで
良き医療をめざすことができ、引いては患者さんがハッピーになれるという
読み終わって、なんだかすっきりする良書です.

先日、ご紹介した「コンサルテーション・スキル 」は
医療従事者向けの本だったのですが
こちらは新潮選書として出版された一般向けの本となっています.

それでも医療従事者が読んでも十分に面白くて納得できる内容です.

医療現場にある対立構造は医者と患者だけでなく
さまざまな対立構造があります.

この本で取り上げられている沢山の対立の例の中に
いくつかは自分に思い当たることが必ずあると思います.

うっとうしい人間関係や対立で、仕事のモチベーションが上がらない時に
きっとこの本が力になってくれると思います.

そのキーワードは
・学校の先生は偉く、お父さんも偉い
・師弟関係もファンタジーで
・評価をしてはいけない
・関係性が改善すれば、結果そのものも良くなる
・大人の態度でファンタジーと知りつつ、ファンタジーに浸る
・「ごっこ」はとても大切
などなど、沢山この本の中に書かれてあります.

 ー「負けるが勝ちの言葉の通り、表面的な部分で言い負かしたって
   世の中そんなによいことはありません.
   一歩引く『大人の態度』が大切です.」
うーん、深いですね.お勧めの一冊です.

新書に比べて少しだけ値段高目ですが、それだけの価値があります.

病院の全てのスタッフが、この本をきちんと読み解けば
さっそく明日からの仕事で無用な対立はなくなるものと期待します.

職場の人間関係に煮詰まっている多忙なスタッフも
この本を読むと少しだけ肩の力が抜けるのではないでしょうか.

「対話」によって患者さんの「価値」を知ること
そして「価値交換の場」としての医療をめざすことの有用性を知って
実践することで私たちの仕事の価値も上がるのではないでしょうか.

蛇足ですが、この本の中で岩田先生がファーストガンダムを
たとえ話にして書かれた部分があります.
同じくガンダムフリークの私としては、ガンダムの話は
すごく分かりやすかったです.

Macユーザーでガンダム世代ということで
ますます個人的に親近感が湧きました.

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「大発見」の思考法に学ぶ [好きな本]

とても贅沢な本です.
ノーベル賞を受賞された山中先生と益川先生の対談なんですから.


「大発見」の思考法 (文春新書)

「大発見」の思考法 (文春新書)

  • 作者: 山中 伸弥
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/01/19
  • メディア: 新書



トップクォークの存在を予言した益川先生と
iPS細胞を生み出した山中先生が「大発見」の思考法について
語り合ったもので、とても中身の濃い本です.

お二人の大発見への道に至るエピソードの部分を読むと
ノーベル賞級の研究が、とても人間的な地道な営みの中から
生まれてきたことがよくわかりました.

お二人とも子供の頃は自営業の家でほったらかしで育ったとか
へぇーと思うエピソードも沢山ありました.

共通しているのは、お二人とも数学が得意であったこと
そして進路を決めるにあたって父親の影響力が強かったことなどが
印象に残りました.

大きな仕事を成し遂げる前のお二人の苦労も赤裸々に語られています.
大発見に至る険しい道のりを知ることは
私たちにも多いに得るところが多いと思いました.

この本の中で語られる
「最良の組織と最良の哲学があれば、凡人でも良い仕事ができる」
という言葉は、平々凡々だる私にとって
とても勇気づけられる言葉でした.

益川先生の座右の銘として
「科学者として目標は高く置きなさい、しかし、着実にできることから
 一つ一つ積み上げていきなさい」
という言葉が紹介されていました.

山中先生は
 「VW ; Vision & Hard Work」
 「明確なビジョンを持ち、それに向かって 一生懸命に努力すること」が
 研究者として成功するための条件とされていました.

この本を読むことで、偉大なお二人の仕事の根幹にあるビジョンを
少しだけ理解できて本当に貴重な本でした.

iPS細胞は、英語でいうと induced Pluripotent Sten Cellの略だそうです.
なぜこれをiPS細胞とネーミングしたかということで
実は「iMac」や「iPad」のネーミングを参考にされたらしいです.

iPS細胞にちょっと親しみを感じてしまいました.

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コンサルテーション・スキル 他科医師支援とチーム医療 [好きな本]

医学書は自分の勉強のためと思って、定期的にチェックして
目ぼしい本は、ネットで購入しています.

どの本もかかわった先生方が一生懸命に執筆されているのが伝わります.
ただし共同執筆だと、どうしてもページ数の制約があるためか
ちょっと物足りない感じになることはあります.

ICUブックのように一人の著者が最初から最後まで好きなように書くという
スタイルの本がけっこう面白いです.

研修医の頃は、とにかく仕事を覚えるために
ちょっとアンチョコではありますが各種のマニュアル本を漁っていました.

さすがに最近は、単なるマニュアル本や教科書のたぐいは
ちょっと飽きてきたというか、集中力が続きません.

なんとなく何処かで聞いたことがあったりで新鮮味のある本が
少なくなったせいかもしれません.

自分の専門領域については、その後も少しずつ勉強を続けて
なんとかアップデートするようにしていますが
どんどん専門分化が進んでいくので本当に大変です.

専門分野から外れることは、教科書を読んで自分で勉強するよりも
積極的にその道のプロに頼んだほうが、自分にとっても患者さんにとっても
幸せだと思います.

一人でこつこつと勉強するよりも、プロのサマリーを聞いたほうが
効率良いような気がしています.

あらゆる分野の専門医師に簡単にアクセスできて
相談できる環境であれば素晴らしいのですが、なかなかそんな訳には
いかないのが現状です.

病院の中では、専門医がその専門性をフルに発揮できるのがベストです.
専門医師が専門以外の仕事に追われるのは、やっぱりどうかと思います.

専門分野を持つ医師たちが、病院の中できちんとチームとして機能することが
大切なのだと思います.なかなか実現は難しいです.

現在では医師のバックグラウンドも多様化しており
同じ大学出身とか、同じ大学医局出身とかという状況ではないことが多いです.

現場でのスタッフ不足、医師不足が問題となる以上
医師同士のコミュニケーション、コンサルテーションがうまくいくかどうかは
病院にとっても、患者さんにとってもある意味、死活問題になります.

医師同士がお互いに能力を高めあうような関係でなければ
病院の仕事もストレス一杯で楽しくないです.

なんとなく題名に魅かれて購入した本ですが、久々のヒットでした.


コンサルテーション・スキル

コンサルテーション・スキル

  • 作者: 岩田 健太郎
  • 出版社/メーカー: 南江堂
  • 発売日: 2010/12/22
  • メディア: 単行本



非常に面白い本でした.書かれた岩田先生は感染症の専門なのですが
話は感染症コンサルテーションに留まらず、病院や組織における
問題点を次々と俎上に上げられています.

このやり方や方法が正しいというような、これまでのマニュアル本ではなく
次々と頭の中のちゃぶ台をひっくり返されるような感じですが
ちょっとわくわくして、現場での仕事や人間関係にいろいろとヒントをもらえます.

医師と医師だけでなく専門や職種の異なるスタッフ同士の
異種格闘技コンタクトでも、ちょっと役に立つと思いますので
全ての病院スタッフの方々にお勧めしたいと思います.

ちなみに著者の岩田先生は、Macユーザーです(この本にも証拠写真が載っています).
なんとなく勝手に親しみを感じてしまいます.

あと内田樹さんの話も出てくるのですが、やっぱりお二人になんとなく共通点を
感じた私でした.

逆境こそチャンスであるとか
他の人を変えるためには、まず自分が変わらなくてはいけない、などなど
うんうんとうなずける話が沢山ありました.

本当に患者さんにとって良い仕事をするためには
一人の力では不十分です.他科医師を支援し、時には支援をしてもらって
良きチーム医療を目指していきたいと思います.

いろいろ愚痴を言ってもしょうがないので
この本を参考にして、まず自分から変わっていこうと思います.

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科学リテラシー [好きな本]

最近は子供たちの勉強している内容も難しくなってきて
わからない事を聞かれると、ちょっとドキドキしてしまいます.

医学部に入学して1〜2年は、家庭教師のバイトをしていましたが
もしかしたらその頃が一番、頭が柔軟で記憶力も良かったかもしれません.

細かい暗記もばっちりだったし、本も沢山読んでいたように思います.

仕事に追われて気がついたら、その頃の大切なものが
すっかりなくなってしまったみたいな感じです.

失われた記憶力を補うかのように身に付いたのは
初めて聞いた知らない事も、笑ってごまかす技術でしょうか.

でも昔はけっこう人見知りで、先生に質問するのもつらかったのですが
仕事で度胸だけはついたせいか、今は知らない事を気にせずに
人に聞けるようになりました.

昔は先輩後輩とか上下関係がかなり気になっていましたが
若い人のほうが頭も柔軟だし、体力もあるわけで
自分よりも年下の先生に新しい事を教わることも全然気になりません.

まあそれが大人になるってことでしょうね.

医者を長くやっていると、あまりの仕事の忙しさにかまけて
一般常識とか他の分野の勉強がついついおろそかになりがちです.

記憶力とか体力はともかくとして、いろいろなことへの興味がなくなるのが
やっぱり一番怖い事ではないでしょうか.

だからこのブログの記事を書くという目的もかねて
いろいろな本を読む事を自分に半ば義務づけています.

長い前置きですが、そんなわけで毛利さんの本が素晴らしかったです.


日本人のための科学論 (PHPサイエンス・ワールド新書)

日本人のための科学論 (PHPサイエンス・ワールド新書)

  • 作者: 毛利 衛
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2010/11/20
  • メディア: 新書



元宇宙飛行士で、現在は日本科学未来館の館長を努めておられる
有名な毛利 衛氏のかかれた本です.

科学とは個人の好奇心を満たすためのものではなく
個々の人間が人間全体、地球全体を考えるための技術であると
毛利氏はこの書でかかれています.

短期的な有用性やお金の問題ではなく
広い意味で社会に役に立つ事を考えるべきとの毛利氏の言葉は
本当に説得力があります.

この本では、毛利氏が館長を務める日本科学未来館の
理念や取り組みなども紹介されていて興味深いです.

まだ訪れたことのない日本科学未来館に、家族で行ってみたくなりました.

暗記力も記憶力も悪くなってしまったのですが
頑張って科学リテラシーは、ぜひ身につけたいと思います.

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「ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 」を読みました [好きな本]

医学がどれだけ進歩しても、人間にとって老化や死は
避ける事の出来ないものです.

医療の現場では、患者さんも医療スタッフも
まるで言い訳するみたいに「もうお年だからねえ」と言う言葉で
なんとなく皆が納得しています.

最近の医学の進歩は、人間にどうして寿命があるのか
生命の限界についての科学的説明がされるようになりました.


ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)

  • 作者: 田沼 靖一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/07
  • メディア: 新書



この本は哲学の話とかではなく、死の遺伝子とアポトーシスについて
あまり難しい理屈はなしで、分かりやすく解説してくれています.

著者の田沼氏は、東京理科大学ゲノム創薬研究センター長を務められています.

アポトーシスは、遺伝子に制御された細胞死ということで
生命を維持するために重要な役割を果たしています.

人間の体は、細胞を多めに作ってあとで消去して制御する戦略で
維持されているということです.本書に書かれた例でいえば
「人間の細胞は1日にステーキ一枚分も死んでいる」ということになります.

アポトーシスを制御している、いわゆる死の遺伝子が
実は生命を保つためにとても重要であることが、本書では
分かりやすく解説されています.

人間の体を形作る一つ一つの細胞は、分裂と再生の回数が
遺伝子で制御されている、つまりは再生能力に限界があるということで
それが人間の寿命に関連しています.

「もうお年だから」という言葉の科学的説明の参考になるわけで
高齢になれば、分裂、再生を重ねた細胞の再生が限界に達して
人間の体の細胞が減っていくという事なんですね.

死の遺伝子を研究する意味は、その研究成果によって
さまざまな難病への治療の道が開ける可能性があります.

たとえば、ガンの治療、アルツハイマー病の治療、AIDSの治療
そして糖尿病の治療などへの応用が研究されているそうです.

つまり細胞死を制御している遺伝子、アポトーシスに関連した遺伝子を
薬剤などで制御することによって、こうした病気の治療の道が
開かれていくのだと思います.

関連してゲノム創薬についてのお話も書かれています.
研究から明らかになったヒト遺伝子の構造を足がかりにして
関連するたんぱく質構造をコンピューターで詳細に解析し
コンピューター上で、病気に関連したたんぱく質に作用する薬物を
検討していく手法だそうです.

私たちが学生時代にならったころの薬理学から本当に進化したのですね.
まさにゲノム薬理学ということですね.

クローン人間や不老不死についてのお話も興味深いものでした.

「人間が生きていく意味は、社会のため、他者のために存在し、
 次世代に何かを残していくことにある」

死の遺伝子を介して、人間の死というものを、
とことん追求することによって大きな包括的な
「人間の生きる意味」というものが見えてきます.

とても分かりやすく良い本です.皆さんにお勧めします.

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「頭が良くなる思考法」を読みました [好きな本]

平凡な毎日を送っている私ですが、天才と呼ばれる人にあこがれます.
天才と呼ばれる人は、いったいどのような頭の構造になっているんでしょう.


頭がよくなる思考法 天才の「考え方」をワザ化する (ソフトバンク新書)

頭がよくなる思考法 天才の「考え方」をワザ化する (ソフトバンク新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2009/09/17
  • メディア: 新書



この本を読むと、天才の「考え方」をワザとして研究し、学習することで
少しは頭をよくする事が出来ると書かれています.

沢山の知識を腹いっぱい詰め込んだところで
それを使いこなす思考や哲学がなければ、単なる歩く百科事典で終わりです.

不確定で先の見えない時代には、新しい出来事に対して
自分の頭で考えて、なんらかの解決策を生み出していく思考の力が
必要であると、この本に書かれています.

仕事の上でも表面だけを、いくら追いかけてみても
単なるコピーに終わるだけで、さらなる進化や変化への対応は出来ないです.

天才にはなれなくても、優秀な方々の考え方を学び
それを自分のワザとして身に付ける事で、
いろいろな応用力が身に付いていくということなんですね.

世の中には、本当に頭の良い人がいるもので
一を聞いて十を知るという言葉でも追いつかないくらい
すごく良く切れる人がいます.

頭の良さとは、知識の量ではなく、自分の周りの出来事に対する
態度や考え方ということなんでしょう.

ペーパー試験では優秀な成績で医師になった先生でも
患者さんや家族との会話が苦手な人がいます.

沢山の知識をもっていても、病院スタッフとのコミュニケーションが
まるっきりだめな先生がいます.

スマートな人間関係も頭の良さの大事な要素ですよね.

周りの人のモチベーションをあげるとか
気持ちよく仕事を出来る環境を作るのも、頭の良さだと思います.

少なくとも私の知る、こうした頭の良い方々は
本当に謙虚で真摯で紳士でひたむきで、腰も低く、こちらが恐縮します.
そんな頭の良い人に私も、いつかなりたいと思います.

私は経験も知識もまだまだ未熟ですけど
日頃お世話になっている皆様との楽しいコミュニケーションで
自分をさらに磨いていきたいとそう思います.


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宇宙は何でできているか [好きな本]

一応、理系ですので高校の頃は、物理は好きな科目の一つでした.

医学部に入ってからも基礎の2年間は物理の講義もありました.

物理というと数学とは切っても切れない関係があって
高校までならともかく、大学での物理の講義は
やたらと難しい数式が羅列して合って、ほとんど数学の講義そのものでした.

とにかく物理の単位を取るために一生懸命頑張りましたが
物理本来の面白さとか興味を維持するのは難しかったです.

それから長い年月が立ち、学生の頃に習った事はほとんど忘却の彼方です(^.^)

最近は iTunes U などでアメリカの大学の有名な講義を
ネット上で聴講することが可能になりました.

あの有名なハーバード大のサンデル教授だけでなく様々な教科の先生が
ネット上に登場しておられます.

MITの熱血物理学教授も大人気だそうです.

 1)MIT「熱血物理学教授」の講義ビデオが大人気 | WIRED VISION
 http://wiredvision.jp/news/200801/2008010921.html

物理.gif

学生の時に、こんな講義を受けていたら、また違った進路を
歩んでいたかもしれません.本当にわくわくする講義です.

最近、文献を読むにしても本を読むにしても、決まった分野の本ばかりのことが
多いです.知らず知らずのうちに狭い範囲で暮らしていました.

たまには学生時代の頃を思い出して、直接ふだんの仕事とは
関係のない本を読まなくてはと思いました.
ということで素粒子物理学の入門書を読んでみました.

 2)宇宙は何でできているのか
   素粒子物理学で解く宇宙の謎


宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

  • 作者: 村山 斉
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/09/28
  • メディア: 新書



もういきなり素粒子物理学です.
クォークにニュートリノにスーパーカミオカンデです.
ノーベル賞を受賞したあの「小林・益川理論」も登場します.

なんてったって「宇宙は何でできているのか」というタイトルは
理系男子にとっては、ほっとけない話題ですからね.

学生の頃に習った量子力学と電磁気学は、私がのほほんと過ごしている間に
いつのまにか合体して統一されて「量子電磁力学」に変身していました.

最近はほとんど物理学とは無縁の生活を送っていましたので
この本を読んだ私は、まさしく今浦島太郎状態でした.

いまさら複雑な高等数学を駆使する数学力などありませんが
この本では、なんとほとんど数学なしに
現代の素粒子物理学のエッセンスをわかりやすく説明してくれます.

専門外の本は、途中で嫌気がさして挫折する事も多いのですが
この本は、ほとんど一気呵成に最後まで読み終える事が出来ました.

ちょっとだけ学生の頃の物理への気持ちを思い出しました.

宇宙に興味のある方にはお勧めです.
ノーベル賞を受賞された日本人の方々の素晴らしい業績が
本当にスゴイことだということが、この本でわかります.

専門外の事は、なかなか凄さがわからないのですが
これからも、ますます日本が研究の中心として
頑張って欲しいと思いました.

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