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「ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 」を読みました [好きな本]

医学がどれだけ進歩しても、人間にとって老化や死は
避ける事の出来ないものです.

医療の現場では、患者さんも医療スタッフも
まるで言い訳するみたいに「もうお年だからねえ」と言う言葉で
なんとなく皆が納得しています.

最近の医学の進歩は、人間にどうして寿命があるのか
生命の限界についての科学的説明がされるようになりました.


ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)

  • 作者: 田沼 靖一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/07
  • メディア: 新書



この本は哲学の話とかではなく、死の遺伝子とアポトーシスについて
あまり難しい理屈はなしで、分かりやすく解説してくれています.

著者の田沼氏は、東京理科大学ゲノム創薬研究センター長を務められています.

アポトーシスは、遺伝子に制御された細胞死ということで
生命を維持するために重要な役割を果たしています.

人間の体は、細胞を多めに作ってあとで消去して制御する戦略で
維持されているということです.本書に書かれた例でいえば
「人間の細胞は1日にステーキ一枚分も死んでいる」ということになります.

アポトーシスを制御している、いわゆる死の遺伝子が
実は生命を保つためにとても重要であることが、本書では
分かりやすく解説されています.

人間の体を形作る一つ一つの細胞は、分裂と再生の回数が
遺伝子で制御されている、つまりは再生能力に限界があるということで
それが人間の寿命に関連しています.

「もうお年だから」という言葉の科学的説明の参考になるわけで
高齢になれば、分裂、再生を重ねた細胞の再生が限界に達して
人間の体の細胞が減っていくという事なんですね.

死の遺伝子を研究する意味は、その研究成果によって
さまざまな難病への治療の道が開ける可能性があります.

たとえば、ガンの治療、アルツハイマー病の治療、AIDSの治療
そして糖尿病の治療などへの応用が研究されているそうです.

つまり細胞死を制御している遺伝子、アポトーシスに関連した遺伝子を
薬剤などで制御することによって、こうした病気の治療の道が
開かれていくのだと思います.

関連してゲノム創薬についてのお話も書かれています.
研究から明らかになったヒト遺伝子の構造を足がかりにして
関連するたんぱく質構造をコンピューターで詳細に解析し
コンピューター上で、病気に関連したたんぱく質に作用する薬物を
検討していく手法だそうです.

私たちが学生時代にならったころの薬理学から本当に進化したのですね.
まさにゲノム薬理学ということですね.

クローン人間や不老不死についてのお話も興味深いものでした.

「人間が生きていく意味は、社会のため、他者のために存在し、
 次世代に何かを残していくことにある」

死の遺伝子を介して、人間の死というものを、
とことん追求することによって大きな包括的な
「人間の生きる意味」というものが見えてきます.

とても分かりやすく良い本です.皆さんにお勧めします.

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T-CHIRO

この世に生まれてくるのも、ある意味奇跡だと思いますし。死んだら次の世界は・・なんて思います。全身麻酔の経験があるのですが・・・あんな感じなのかと思ってみたり(笑)
生物には必ず死があります、尊敬する先生の本に、人間が生きる目的の答えは一生考え続けてでるんものだと。
by T-CHIRO (2010-12-24 14:23) 

yangt3

>T-CHIROさん、コメント、niceありがとうございます.
Memento moriであって、生きる目的を知るためにこそ
死を考える事はさけて通れないということなんですね.
by yangt3 (2010-12-24 16:50) 

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