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錯覚の科学 [日記]

人は、完璧な存在でなく、必ず間違いを冒すものという前提で
いかにヒューマンエラーをシステムとして少なくするか
それが失敗学から私が学んできたことです.

さらには人間の認知機能も、心理的状況、身体的状況、そして
環境などの要因から、容易に錯覚を起こしやすくなります.

誤解、思い込み、思い違い、記憶の改ざん、不確かな理解.

やっかいなことに誤解と思い込みと誤解で生じた真実でない出来事も
いつしかその人の中で、絶対的な真実として確立してしまいます.

錯覚と錯覚との対決は、時に人間関係の不協和音や不和の原因となり
そして国家間の錯覚の応酬は不幸な歴史に繋がります.


錯覚の科学 (文春文庫)

錯覚の科学 (文春文庫)

  • 作者: クリストファー チャブリス
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/08/06
  • メディア: 文庫



アメリカの二人の新進気鋭の心理学者が、この不可思議な錯覚について
心理学、脳科学、認知科学、神経心理学の実験や研究をもとにして
綿密に分析、解析した書です.

心理学的に次々と明らかにされてきた錯覚、認知の問題と
脳科学の進歩がとても興味深いです.

「えひめ丸はなぜ沈没したか」、見えているのに見えず認知できない錯覚.

「人間はバスケの試合に乱入したゴリラにさえ気付かない」

「ねつ造されたヒラリーの戦争体験」

「人は記憶を脳に定着させる時、本当にあったことだけでなく
 あるべきことを勝手に混同してしまう」

「なぜ人は他人の体験談を自分の体験談と思い込んでしまうのか」

「裁判証言でも錯覚が起こりえる」

「合成写真を使うことで、人の記憶を変えることが出来る」

「難解な言葉や概念を駆使する専門家でさえ、肝心のことが
 わかっていないことがしばしばある」

「偶然を必然であると捉えたがるのが人間である」

「情報や状況への錯覚や思い込みから、人は自信過剰となり
 時に大きな誤りを犯す」

「反論に耳を貸さない自信過剰の医師と、医学書を調べる医師と
 どちらが名医なのか」

「おのれの無知ほど自覚しにくいものはない」

錯覚や間違い、そしてヒューマンエラーを出来るだけ最小限に抑えて
少しでも確実な作業と仕事が必要とされる職業の方には重要な
ヒントが沢山詰まった本です.

医療の世界でも診断ミス、ヒヤリハット、医療ミスを未然に防ぐため
錯覚に陥りやすい人間の心理をきちんと知っておくことが大切です.

そして現在の世界にはびこる俗説、デマゴーグ、陰謀論、都市伝説
さまざまな自己啓発関連などなど、錯覚の科学の目を通じて
きちんと見直すことが出来るようになります.

「人間心理による錯覚」の可能性を思い起こすことで
少なくとも突飛で早急な早とちりの行動を避けることは出来ると思います.

結局、人間関係も組織も仕事も、お互いの好き嫌いの感情や相性が合う合わない
そんなことで左右されるものなのでしょうか.

そしてそんなお互いの思いも錯覚に左右される.まことに厄介な人の心...

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Kim

興味深い本の紹介ありがとうございます。

アマゾンで購入しました!!

by Kim (2014-08-23 17:28) 

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