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良い戦略、悪い戦略 [日記]

最近はいろいろな場面で「戦略」という言葉を聞きます.

循環器のライブデモンストレーションでも、術者の先生やコメンテーターの方々に
座長の先生がまず言われるのは「先生のストラテジーをお聞かせ下さい」です.

厳密に言うと「戦略」というのはもっと幅広いものであって
「戦略」と「戦術」とは意味合いが異なります.つまり

「戦略」とはstrategy(ストラテジー)であり行動の全体的な方針のことです.

「戦術」とはtactics(タクティクス)であり、個々の現場で細かい対応のことです.

目標達成のために全体的な方針と作戦を決めるのが「戦略」であって
戦略に基づいて個々の細かい行動を進める方法が「戦術」となります.

もっとマニアックにいえば「戦略」レベルでの失敗は
個々の「戦術」レベルでの頑張りでは覆す事はなかなか困難です.

ということでライブデモンストレーションでの言葉は厳密にいえば
個々の症例での治療の手順が問われているわけであり「戦術」を使うべきです.

違う例で言えば、いくら現場で頑張っても、管理職やトップが
しっかりとした方針や戦略がなければ、現場は疲弊し大変なことになるわけです.

私は、これまでいくつかの病院を経験してきましたが
こうした厳密な意味で、きちんとした「戦略;ストラテジー」を持って
運営されているところは、あまり多くはありませんでした.

日本人の伝統とでもいうべきなのでしょうか、いろいろと議論を重ねても
最終的には精神論、根性論となってしまう事をしばしば目撃しました.

「根性出して、一生懸命やればなんでもうまく行く」というわけです.

なにかトラブルが生じた場合には、現場で関わったスタッフが
一生懸命にやっていなかった、熱意が足らなかったという話にすり替わってしまう.
良く聞く話ではありますね.現場は疲弊するばかりです.

戦闘の数理モデルとしてランチェスターの公式が良く知られています.

 ランチェスターの法則

マーケティングや経営学、ビジネス領域での戦略決定に
このランチェスターの法則が応用されて議論されています.

例えば、様々な分野に手を伸ばすことで、間隙を突いてのし上がろうとする
他社の行動を防ぐことができる、となります.

一般的には、強者のとるべき戦略は追随戦略で、敵と同じ性能の武器を持ち、
広い戦場で、多対一で戦い、遠隔戦を行い、力を総動員して圧倒することである、です.

つまり、1ケ所に人材や予算、労力を集中させるほど効果的である、というわけで
戦力の出し惜しみ、逐次導入は、最初から戦いに負けている、という話になります.

マンパワーや予算が限定されている、もしくは援軍が望めない
医療現場に必要なのは、このランチェスター理論からいえば
必要な医療スタッフの増員、予算の重点配備、となるわけで、集中的に力を集めれば
医療崩壊も食い止める事が出来るはずです.

しかしながら、現実はそうではありません.

政治の世界においても、マスコミにおいても、閉塞状況を改善するべき
本当の意味での「戦略」が示される事は、あまり多くはありません.

どちらかといえば、耳に聞こえのよいスローガン的、精神論的な
「目標」、「標語」があたかも「戦略目標」として提示されるだけです.

私たち、現場の人間も「良い戦略」と「悪い戦略」を見極める目を持つべきです.


良い戦略、悪い戦略

良い戦略、悪い戦略

  • 作者: リチャード・P・ルメルト
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2012/06/23
  • メディア: 単行本



いろいろな本をこのブログで紹介させていただきましたが
はっきり言って、この本はちょっと秘密にしておきたかったのです.

この本は、巷にあふれる戦略本とは全く別物です.容易な精神論的な話で
お茶を濁す事なく、論理的に良い戦略について詳細に書かれた本です.

いろいろな場面でこの本で書かれた内容が役に立つと感じました.
実際にこの本を読んでいただいた方には、判っていただけると思います.

良い戦略こそが事態を打開するために必要あり、トップリーダーの努めだと思います.

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