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心臓外科医が描いた正しい心臓解剖図 [日記]

私が研修医として心臓カテーテル検査を習い始めた頃は、今のような
デジタル環境も不十分でありました.

Macは、まだモノクロのMacintosh SE/30が主流の頃でありまして
Macintosh IIciではカラーモニターが使えたのですが、とても高額で
若手医師が手を出せるようなものではありませんでした.

もちろんDVDはおろかCDもQuickTimeもまだ登場する前で
デジタルカメラもスキャナもありませんでした.

カテ画像の供覧は、昔のフィルム映画のようにフィルムに記録して
アナログなシネ再生装置で閲覧してました.学会プレゼンようには
直接に同じく専用のアダプタを装着した一眼レフカメラで撮像してたのでした.

その頃はスライドを作るのも本当に大変だったのですが、それはまた別として
そんな時代なので、当然カテ記録は全て手書きでありました.

そもそもカテの教科書もあの延吉正清先生の「冠動脈造影法」だけであり
その本には造影写真とともに詳細な冠動脈のイラストが掲載されてました.

カテを極めるには、自分で造影した冠動脈のイラストを描くべきであるとの
上司の指導もあって、私も冠動脈イラストを一生懸命に描いたものでした.

その当時の外科医も心臓外科医も手術記録といえば、同じように
手書きのイラストが描かれていたものです.

内科系の医師にもわかりやすく説得力のあるイラスト付きの手術記録を
あざやかに書きこなす外科医には、当然その手術の技量にも信頼がおけました.

今では、効果なデジタルカメラでなくても、手持ちのスマホやiPhoneで
きれいな写真も動画も記録することが出来ます.

自分でイラストを描かなくても、デジタル処理した画像とPCを使えば
きれいな手術記録やカテ記録が簡単に作れてしまいます.





まさしく心臓外科医が書いた心臓解剖図ということで、これまで目にした
教科書のイラストとは明らかに一線を画しています.素晴らしい図の数々です.

カテーテルを行う循環器内科医にも役に立つ解剖図が掲載されています.

心臓のドクターがきちんと判った上で書き上げた精緻なイラストが
きれいなデジタルカメラの写真よりも、きちんと臨床の本質を伝えているのです.
私もこの書を読んで、改めて自分のカテーテル研修医時代のことを思い出しました.

デジタルデータと文字情報のデータベースだけでは伝えられない
臨床的なエッセンスというものがあり、この本にはそのヒントが詰まっています.

心臓.gif

例えばOCTやIVUSやそして基本の冠動脈造影の読影についても
きちんと情報を伝えるためには、自分が見たものや画像の本質を
自分なりに咀嚼しデータ解析する作業が必要になります.

イメージングをきちんと読影出来ない限りは、ちゃんとした正しいイラストも
作ることは出来ないと思います.

幸いなことに、私のカテ室の若手医師は、デジタルデータにとどまることなく
必要な冠動脈造影所見やイメージング所見は、カテ記録に手書きのイラストを
自分できちんと書いているのです.

一見遠回りのようであるけれど、昔ながらの自分で画像を描くということが
治療の質の向上には重要なことなのだと再認識しました.

医師だけでなく、心臓にかかわる看護師、臨床工学士、放射線技師などの
コメディカルにも私と同じように、きっと役に立つに違いありません.

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