SSブログ

静脈血栓塞栓症とファンダパリヌクス(アリクストラ) [学会、研究会、研修]

6月5日(日曜日)は、神戸で開催された講演会に参加してきました.

急性肺塞栓症、急性深部静脈血栓症に代表される深部静脈血栓症の
治療についての講演会です.

今回、急性肺塞栓症、急性深部静脈血栓症に対して
抗Xa阻害薬であるファンダパリヌクス(アリクストラ)が使用可能となり
この新しい薬についてのお勉強です.

東北、九州を含めて全国から沢山の先生方が集まりました.

アリクストラ1.gif

あの有名な国枝先生もいらっしゃっていました.
会場の周囲を見回してみると、本当に偉い先生や重鎮の方々が一杯です.

アリクストラ2.gif

肺塞栓症研究会の世話人である中野先生もいらっしゃっていました..

アリクストラは合成された薬剤ということで
これまで一般的に使用されていた未分画ヘパリンに比べて、均一な薬剤のため
作用が安定していること、長い持続時間が期待されることや
HIT(ヘパリン誘発性血小板減少症)などを起こすおそれがないなどの利点があります.

なによりも1日一回の皮下注射ですみやかな吸収と効果が期待され
さらに出血の合併症も少ない薬剤というのは
医療スタッフにも治療を受けられる患者さんの皆さんにとっても
嬉しいことだと思います.

腎排泄であるため腎不全、腎障害の患者さんへの使用には注意が必要で
その場合には従来のヘパリン使用ということになります.

欧米諸国では、このファンダパリヌクスは、かなり以前より使われ
安全性も有効性も確認されていたそうですが、国内使用が可能になるまでに
長い長い時間がかかってしまいました.

今回の大震災の状況にかんがみても
医療に関する認可はもっと迅速で柔軟に進めていただきたいと切に願います.

くしくも、このアリクストラは3月11日に国内での使用が可能となり
被災地での静脈血栓症の治療と予防に活躍したとのことです.

今年は、このファンダパリヌクス(アリクストラ)に加えて
ダビガトラン(プラザキサ)も加わって、国内の抗凝固療法は
実に十数年ぶりに新たなステージに進化した記念すべき年です.

余談ですが先日、臨床使用が可能になった新しい抗凝固薬であるプラザキサは
来年春まで2週間以上の長期投与が出来ないことになっています.

震災に伴う静脈血栓症の予防という観点からみても
こうした有効な薬についても型通りではなく早い時期に
長期投与を可能にしていただくことが被災地支援にも
つながるのではないでしょうか.

欧米ではアリクストラの自己皮下注による外来治療が行われています.

残念ながら、今回、使用可能になったアリクストラは、まだ国内では
自己皮下注による投与は認められていません.

関係各位の方々のご尽力に期待しております.

急性肺塞栓症の治療の関して、TPAとアリクストラの併用の具体的な方法や
さらには下大静脈フィルターとアリクストラとの使用の是非
さらにはAT-III欠損症例におけるアリクストラの使用の是非など
臨床現場での具体的な新しいガイドラインの確率が待たれるところです.

とりあえずは右心負荷がなくて抗凝固療法治療がメインになる症例で
アリクストラをメインに使う流れになるのではないかと思います

深部静脈血栓症の診断としてCTとエコーが重要であることは論を待たないですが
足に留置したルートより造影剤を流しながら撮像するCTによる
CT静脈造影が、ちょっと興味深いと感じました.うちでも試してみたいと思います.

アリクストラ3.gif

Ai〔オートプシーイメージング)のお話もあり興味深かったです.

通常のAiでは造影が出来ないのですが心臓マッサージを併用しながらの
造影剤注入で、造影効果が得られてより診断能が高まるというお話もありました.

急性期の静脈血栓症のカテーテル治療についても興味深いお話があり
なかでも膝窩からの経皮的静脈血栓吸引療法は参考になりました.

和歌山医大放射線科では、こうしたDVTへの積極的なアプローチを行っており
下肢静脈血栓に対しても積極的な血栓吸引療法と静脈へのステント植え込みを
行っているそうです.勉強になりますね.

PCPSを要するようなショック症例や下大静脈フィルターを留置した症例では
これまで通りヘパリン投与が行われるという流れになります.

今後、国内でのデータの蓄積を待ってより良い治療の構築が待たれます.

nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 7

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

そして、神戸あこがれの鉄人28号 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。