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東濃SPAF Meeting in 多治見 [学会、研究会、研修]

平成23年6月11日(土曜日)に地元の多治見で開催された
東濃SPAF Meetingに参加してきました.

メインの特別講演は京都大循環器内科 静田 聡先生による
「心房細動患者における心原性脳塞栓症予防」でした.

この講演のタイトルからおわかりいただけるように
東濃SPAF MeetingのSPAFとは、スペシャルなAFに関するミーティングと
いうことになります...たぶん.

1.オープニング.gif

オープニングは、プラザキサのメーカーさんである
べーリンガーのお姉さんのお話です.

近隣の循環器診療に携わっている実地医科の先生方を含め
多数の先生方が参加されていました.

最近になり抗凝固療法に新しい直接トロンビン阻害剤である
プラザキサというお薬が臨床現場で使用可能になりました.

さっそく当院においても心房細動の患者さんに新しい薬剤による
抗凝固療法による治療を開始しているところです.

2.講演.gif

特別講演の講師を務められた静田先生は
京大循環器内科の不整脈チームで活躍されている新進気鋭の先生です.

普段は沢山のカテーテルアブレーション治療を行われているそうです.

今回はそんなばりばりの不整脈の専門家が
心房細動の新しい抗凝固療法について
詳細にお話をしていただきました.

非弁膜症の心房細動を有する患者を対象に
トロンビン阻害薬であるプラザキサ(ダビガトラン)とワーファリンを
比較したRELY試験という臨床試験を中心にして
抗凝固療法について詳しくお話を伺いました.

心臓からの血栓が原因で発症する心原性脳梗塞は
その他のタイプの脳梗塞に比べても重症度が高く、
QOLの低下も著しいのです.

そんな心原性脳梗塞のリスクの高い非弁膜症性心房細動患者において
きちんとした抗凝固療法による脳卒中の予防がとても大切です.

これまではワーファリンというお薬が主であったわけですが
新しく登場したプラザキサという薬剤は
有効性、安全性についてワーファリンと同等それ以上の効果を
持っているそうです.

もちろん新しい薬剤の成績に対しては医学に携わるものとして
批判的に自分の頭で吟味して評価する必要があります.

 論文の記載と解釈における見識と矜持――SPINとRELY試験からの考察

実際にはこのRELY試験ではワーファリンによる治療は
目標とする治療域PT INRを達成している比率は
64%しかなかったということです.

ワーファリンというお薬は厳密な治療のコントロールのためには
頻回の採血によるチェックが必要なばかりか
納豆を始めとしてさまざまな薬剤の影響も受ける他、
代謝の個人差も大きく、世界的に有名な臨床試験でさえ6割程度の
治療コントロールにしかならないわけです.

治療にいわば名人芸を必要とするワーファリンに比べれば
新しいプラザキサは細かいモニタリングも必要とせず
研修医の先生もベテランの先生も同等の治療効果を
得る事ができるということで
これこそが医学の進歩という感じがします.

全ての抗凝固療法がプラザキサに代表される新しい世代の薬剤に
置き換わっていくことになるのでしょう.

ただ現状ではプラザキサというお薬も完璧ではありません.
腎排泄80%ということで腎障害および透析患者さんには
プラザキサを使う事が出来ないのです.

腎障害の患者さんにあってはこれまでどおり、きめ細かい
ワーファリンによる抗凝固療法が必要になります.

現時点では心房細動というしばりがあるプラザキサですが
欧米では深部静脈血栓症、肺塞栓症などの静脈血栓塞栓症予防に
ワーファリンに代わってプラザキサが使われるようになっているそうです.

弁置換術後のワーファリン投与の代わりにプラザキサが
果たして有効であるか、それは人工弁の血栓による合併症が
激烈であるために世界的なきちんとしたエビデンスの蓄積を
待つ必要がありそうです.

3.抗凝固療法.gif

循環器の領域ではジゴキシン、キニジンというお薬があります.
ワーファリンと同様にこの二つのお薬も
自然界にある植物から抽出されました.

ジゴキシン、キニジンとも心臓病治療の歴史において
重要な役割を果たしました.
しかし抗不整脈薬としてみるならば、どちらの薬剤も以前に比べれば
使用頻度は減っています.もちろんなくなる事はないでしょう.

医学の進歩、治療薬の進歩というのは、このようなものだと思います.
明るい未来のためにさらに優秀な抗凝固療法の発展を期待しています.

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コメント 2

Bluemoon

“プラザキサ”ほんまにモニタリングいらないのかなぁと漠然と思ってます。腎機能悪い方にはダメなのですね。弁置換後のPtさんも気になってました。
ドクターへのお薬の説明会は多々ありますが、他職種にも教えて欲しいなぁなんてワガママ?(^^;)
お薬は難しいです。

by Bluemoon (2011-06-12 18:04) 

yangt3

>Bluemoonさん、コメントありがとうございます.
基本的には頻回のモニタリングは不要ですが
腎障害や薬剤相互作用を含め細かい注意事項はあります.
当院では、医師だけでなくコメディカル向け対象にも
新規薬剤の勉強会を定期的に行っています.
by yangt3 (2011-06-13 09:28) 

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